近頃、ebay輸出セラーの間で「パテントトロール」による被害が相次いでいます。
「ある日突然、海外の法律事務所から警告メールが届いた……」
「警告と同時に、eBayやPayoneerのアカウントが凍結されてしまった」
真っ当に出品しているし自分には関係のないこと、と考えていたのに、ある日突然、国際的な特許侵害の当事者にされてしまうなんて質の悪い冗談だと考えたくもなりますが、残念ながら現実におきています。
そこで、この記事ではパテントトロールの基礎知識とその手口、具体的な対処法について解説します。
そもそも「パテントトロール」とは?

ebayセラーのなかには「パテントトロール」という単語をはじめて聞くという人も多いでしょう。
危険性を理解するためにも、まずはパテントトロールの基本について解説します。
パテントトロールは「特許」の悪用をする人の名称
パテントトロール(特許トロール)とは、自社では製品を製造せず、他者から買い集めた特許や商標、意匠権などを武器に訴訟する人や集団のこと。
特許侵害に対する訴訟は知的財産に関する問題を解決するために行われますが、パテントトロールは特許侵害の訴訟を利益を得るために行うという点が通常とは大きく異なります。
権利を侵害しているといって個人や企業を相手に訴訟を起こし、和解金を得ることをビジネスモデルとしています。
その姿が、通行人から金品を奪うトロール(モンスター)に似ていることから、そう呼ばれるようになりました。
なぜebayセラーが狙われるのか?
パテントトロールがebayのセラーをターゲットにするのは、和解金を回収しやすいからという理由があります。
パテントトロールとして訴訟する場合、訴訟相手の個人情報を得る必要はありません。
また、訴訟を起こされるのは基本的にアメリカですが、裁判をするためには現地にいかなければならないうえに非常に高額で、時間もかかります。
また、本当に特許侵害をしているかどうかは曖昧で、それを否定するために、さらに多くの時間と労力と費用をかけることになります。
すると、「裁判で争うよりは、和解金を支払ったほうがマシだ」という選択肢しかなくなります。
また、個人セラーは法的知識が乏しく、突然の訴訟にパニックになって言いなりになりやすい、という点も狙われる理由です。
被害に遭ったらどうなるの?パテントトロールの実態

実際にパテントトロールの標的になると、どのような事態に陥るのでしょうか。
ここでは、パテントトロールを起こされた場合の、セラーの被害について解説します。
アカウント・資金の凍結
パテントトロールのターゲットになった場合、裁判所からの命令として、eBayや決済サービスのPayoneerのアカウントが凍結されます。
これによって、出品中の商品はすべて取り下げられるだけではなく、売上金も差し押さえられます。
法律事務所からの通知
アカウントが凍結されたあと、法律事務所からメールなどで正式に通知が届きます。
そこには、特許を侵害しているという主張と、和解に応じるよう求める内容が記載されているのが一般的です。
狙われやすい商品の危険な特徴
キャラクター関連商品
パテントトロールのリスクが高い商品として、アニメやゲームのキャラクターを使用したものが挙げられます。
最近では、初音ミクやゴジラなどが狙われたと言われています。
たとえ公式ライセンス品でも、特定のポーズやデザインが意匠権に抵触すると主張されるケースもあります。
特定の機能や名称を持つ商品
一般的な商品でも、その製品に使われている特定の技術や、商品名に含まれる特定の単語が、特許や商標に触れると主張される場合があります。
セラー自身が意図せず権利を侵害してしまう、非常に厄介なパターンです。
アカウントを守るための具体的な対処法
では、パテントトロールの被害に遭わないためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
事前に取れる対処法について解説します。
危険なジャンルには手を出さない
パテントトロールに遭わないためにも気を付けたいのが、危険なジャンルに手を出さないということ。
怪しいと感じるキャラクターものや、過去にパテントトロールの標的となったとされる商品はできれば避けましょう。
海外知財訴訟費用保険を検討する
リスクのある商品を扱いたい、万が一に備えたいという場合は、JETRO(日本貿易振興機構)などが提供している「海外知財訴訟費用保険」に加入するという選択肢もあります。
パテントトロール警告が届いた場合の対処法
実際に警告のメールが届いてしまったらどうすればいいか、その対処法について解説します。
ebayでパテントトロールの被害に遭った場合、取れる手段は以下の3つ。
- 裁判で闘う
- 和解
- アカウントを諦めて新規作成する
まず、アメリカで裁判をすることになる①は非常にハードルが高いと言えます。
②は資金にある程度目途がつくなら検討の余地もありますが、厳しいといわざるを得ません。
また、その訴えられたアカウントが高収益を見込めるものかどうかも、検討すべき要素です。
そうすると③が現実的と言えます。
サスペンド(アカウント凍結)への対応と流れはそれほど変わりませんし、実際にこの手段を取る人も少なくありません。
ただ、焦って判断しても良いことはないので、以下で挙げる2点に注意しましょう。
- 絶対に無視しない
- すぐに専門家に相談する
それぞれについて詳しく見てみましょう。
絶対に無視しない
身に覚えがないからと無視するのは悪手です。
通知を無視すると、相手の主張をすべて認めたことになりかねません。
状況の悪化を防ぐためにも、通知に対して冷静に対応しましょう。
すぐに専門家に相談する
冷静に対応する、といっても個人でできることには限りがあります。
自分一人で相手と交渉しようとしたり、安易に和解金を支払ったりするのもできれば避けたいところ。
そうしないためにも、越境ECやアメリカの知的財産権に詳しい弁護士などの専門家に相談しましょう。
JETROの海外展開支援窓口などに問い合わせてみるのも一つの手です。
正しい知識を身につけて身を守ろう!
ebay輸出に潜む新たな脅威「パテントトロール」について解説しましたが、重要なのは以下の4点。
- パテントトロールは、和解金目的でセラーを訴える存在のこと
- 狙われやすいのは、キャラクター商品や特定の技術・名称を持つ商品
- 最大の対策は「危険な商品に手を出さない」こと
- 被害に遭ったら「無視せず、専門家に相談する」ことが鉄則で
パテントトロールは非常に迷惑な存在ですが、手口や狙われやすい商品を知っておけば、被害に遭うリスクは減らせます。
「パテントトロールに遭うかも……」と過度に萎縮してしまっては、ebay輸出どころではなくなってしまいますよ。
パテントトロールに対抗するためにも、正しい知識を身につけてリスクの少ない商品を扱い、事前に身を守れるようにしておきましょう。
「安全にebayを運用したい」「いざというときに相談できる人はいないかな……」などと迷っているのなら、物販ステーション@じんこまのコンサルを活用してみてくださいね。
